村八分とは、まだムラ社会の名残が残る田舎で起きると言われる、地域を挙げて行なわれる嫌がらせ行為です。
始まりは江戸時代からと言われていますが、明治以降でも古い因習を重んじる地域では起きていると言われています。
2010年代になっても村八分の被害や、村八分をきっかけに起きた残酷な事件が全国的なニュースで取り上げられています。
このように、令和の世になっても村八分はどこかで起きている可能性は十分に考えられるでしょう。
そして、特に田舎に住む方には村八分の被害に遭う危険が常につきまとっているともいえます。
中には、現在進行形で村八分の被害に苦しみながらも、様々な事情から土地を離れられずに暮らし続ける人も。
しかし、村八分も証拠を集めれば十分対処可能です。
この記事では、村八分の方法や被害事例、対策する方法について解説します。
まずは、村八分とは一体どんなものか知っておきましょう。
もしかしたら、今自分が受けている行為が「村八分かも…」と気付けるかもしれません。
村八分の詳細や、その歴史を紹介します。
村八分とは、同じ地域に住む住民が結託して、特定の人物や家族との交流を断つ行為を指します。
昔の日本は集落単位で生活が営まれていたため、近隣住民の繋がりは現在よりはるかに色濃いものでした。
そのため、近隣住民との関わりが断たれることは、社会から断絶されることとほぼ同義でした。
また、村八分は村の首長や権力者が首謀者となるため、他の住民は逆らうことが難しいです。
結果として、不本意ながらも自分の生活を維持するために村八分に加担する人も多かったと言われています。
村八分の根源は人が誰かを敵視する・疎ましく思う感情に起因するため、同様の行為ははるか昔から行なわれてきたと考えられます。
明確に「村八分」という言葉が使われ出したのは、江戸時代頃と言われています。
当時は法律も細かく整備されていなかったため、ムラ社会の閉鎖性から被害が明るみに出ることも少なかったのでしょう。
明治時代に入ると、明治憲法制定に伴う法整備が進んだことで、村八分の問題も取り上げられるようになりました。
明治44年9月5日の判決では、村八分は「無条件で脅迫である」という見解が示されました。
(参考:滋賀大学学術情報リポジトリ)
これにより村八分は法律上の不法行為となりましたが、抜け道をかいくぐるかのような形での村八分が続いていきました。
そもそも村八分の「八分」とは、ムラ社会の生活における10個の付き合いの内、8個を禁ずるということが由来です。
(参考:滋賀大学学術情報リポジトリ)
この内、「火事」「葬式」のときだけは村八分にされた人でも参加が許されています。
火事は建物に延焼する危険があり、他の住民に危険を広げないようにするためです。
また、遺体を葬らないままにすると腐乱して悪臭や衛生状態の悪化が懸念されます。
地域全体の安全や衛生に関わることのみは繋がりが保たれますが、それ以外については断絶されます。
特定の人物や家族を、村全体を挙げて排除する村八分はなぜ起きてしまうのでしょうか。
村全体で嫌がらせに加担するという行為は、はたから見れば異常とも言えます。
村八分を行なう集団心理が働いてしまうきっかけを紹介します。
村八分の標的にされやすいのは、他の地域から引っ越してきた人です。
引っ越してきた人はゴミ出しや集会について何も知らないため、知らぬ間にルール違反をしたり、地域の輪を乱してしまうこともあり得ます。
また、土着の風習や暗黙のルールも当然わかりません。
そこで正しいルールを教えるわけでもなく、排除する方向に持っていくのが村八分の始まりになります。
歴史の長い地域では、連綿と続いてきた風習が存在することがあります。
数百年続いてきた風習を守ることを「美徳」と捉え、その風習に反する行為は徹底的に対抗します。
客観的に見たら現代の価値観にそぐわないことでも、その地域では「伝統」なのです。
長く住む人ほど伝統を重んじる傾向が強く、伝統を汚すような行動には厳しく対応します。
地域によっては自治会や集会のリーダーが強い発言力を持っている場合があり、メンバー達が右にならえ状態になっていることがあります。
それを知らないまま自治会・集会に参加して、リーダーが機嫌を損ねることをすれば風当たりは一気に強くなります。
メンバーはリーダーの指示通りに動いたり、ご機嫌を取ろうとあの手この手で嫌がらせをしてくるでしょう。
また、地域全体への根回しを素早く進めて、いつの間にか完全な村八分状態にさせられていることも。
リーダーに逆らえない人達は、自分も同じ目に遭いたくないため、村八分に加担するしかありません。
村八分には、具体的にどのような方法が用いられるのでしょうか。
中には大の大人が堂々とやる行為ではないものもありますが、これも立派にダメージを与える方法です。
村八分の手法を解説していきます。
村八分はある日突然行なわれますが、その地域の首長が代表して対象の住民に村八分されることを通達します。
多いのは直接対象住民と顔を合わせて口頭で通告するパターンと、書面を張り出して通告するパターンです。
あくまで村八分は「皆で決めた取り決め」であるとして、地域のために必要な行為だというスタンスが見て取れるでしょう。
しかし、村八分は立派な嫌がらせ行為で褒められたものではありません。
同じ地域に住む人たちが共同で使うゴミ捨て場や水道施設などを使わせないのも、村八分の手法です。
このような生活インフラに関わる部分でも嫌がらせをされると、生活そのものが維持できなくなる危険すらあります。
集団心理により嫌がらせ行為のブレーキが効かなくなると、危ない結果に行き着く可能性も考えられます。
回覧板は地域の情報をまとめた台帳で、住民間で回すことで情報共有を行ないます。
この回覧板を回さないことで、地域の情報を入れさせない嫌がらせもあります。
ただ、都市部では回覧板を回さずに生活が成り立つ地域もあるため、回覧板そのものの存在意義も危ぶまれている状況です。
よって、被害者が地域とは関わらないスタンスを取れる場合はそこまで痛手にならないでしょう。
近所に住む住人が、生活の様子を監視しようとのぞき見をしてくることもあります。
ターゲットの行動パターンを把握・共有して、次の嫌がらせの作戦を立てる目的が考えられます。
また、単に監視すること自体が目的の可能性も。
もし家の周辺を誰かが歩いているのを確認することが多くなったら、監視されているかもしれません。
定期的に開催される自治会や地区の集まりに呼ばれなくなるのも村八分の手法の一つです。
こうした集会から排除することで、地域独自の価値観の保護・醸成を図ります。
集会によって芽生えた仲間意識に入れさせないことで、ターゲット以外との結びつきを強める狙いです。
また、疎外感を与えて孤立させるのも目的と言えます。
ターゲットが認知しないところで、ひそひそと陰口を言う手法もあります。
ときには全く覚えのない話に尾ひれが付いて、事実無根の誹謗中傷が広まる可能性もあるでしょう。
噂が拡大するスピードは早く、人口の少ない地域ならなおさらです。
これは立派な誹謗中傷・名誉毀損に該当する行為といえます。
自治会に参加しようと思っても、参加を認めてくれない場合は村八分が起きているかもしれません。
特に人口の少ない地域では、地域ごとの集まりの重要性はかなり高いです。
こうした集まりへの参加が地域に溶け込む足がかりとなるのですが、そのきっかけすら与えられないのは明らかな狙いがあると見ていいでしょう。
自治会の誰か、もしくは地域全体が拒絶を示していると考えましょう。
首長の権力が強い地域では、郵便局員にも大きく影響を与えることができてしまいます。
首長が「特定の家に郵便を届けるな」と配達員に言えば、配達員は従うしかないでしょう。
他にも、届いた郵便物を破かれる被害も起きる可能性があります。
このように、地域によっては公的機関も村八分に加担させるケースも存在します。
警察ですら村八分に対応できないことも考えられるでしょう。
畑を所有している家が村八分に遭うと、できた作物が無くなっていることがあります。
害獣対策をしているのに作物がなくなった場合は、誰かが勝手に作物を取っていると考えていいでしょう。
畑は家の敷地内でなければ四六時中監視し続けることは難しいため、どうしても奪われる隙ができてしまいます。
ペットを外飼いしていると、外部の人間が危害を加えることも容易です。
殴ったり石を投げつけるなどの直接的な暴行だけでなく、毒入りの餌を食べさせようとするケースも。
最悪の場合ペットの命に関わる事態になりますので、村八分されているときはペットは室内飼いにするのがおすすめです。
ときには、大人の発想ではやらないような幼稚な嫌がらせ行為も行なわれています。
一例を下記に示しましたので、ご確認ください。
など
一見するとくだらない内容の嫌がらせ行為もありますが、集団心理が加速するとこうした幼稚な行為も是とされてしまいます。
村八分は江戸時代以前の古めかしい因習ではなく、現代日本でも起きている地域を挙げた嫌がらせ行為です。
近年でも村八分による嫌がらせ被害がニュースで取り上げられ、まだまだ身近に潜む危険であることを示しています。
ここ数年で発生した村八分の事例を紹介します。
2013年7月21日に、山口県周南市の金峰地域にある人口12人の限界集落で、5人の男女が殺害され、家が放火される事件が起きました。
事件は、関東からUターンした当時60代の男が起こした。年老いた両親を看取ったのち、ひとりで暮らしていたその男は、人口わずか12人の集落の一員だった。草刈りや祭りの手伝いなど集落の作業には参加せず、近隣との交流を断っていたという。所持金が底をつきかけたとき、突如5人を殺害し、そのうち2軒の家に火を放ったのだった。
「つけびして 煙喜ぶ 田舎者」
事件発生時から姿を消していた男の家の窓ガラスには、そんな不穏な川柳が貼られていたことから、犯行予告かと騒がれた。くわえて、田舎の集落で一晩のうちに村人が立て続けに殺害されたという事件の内容が、1938年に岡山県で起こった津山三十人殺しを連想させるためか “平成の八つ墓村” などと呼ばれたりもした。
さらには事件発生当時、男が集落でいじめられていたという報道が出たことで、「殺害された被害者らが実は加害者の男をいじめていた」という「うわさ」が、その後もインターネット上に根強く残ることとなった。
(引用:前略、塀の上より(3) インターネットという「村」における「田舎の闇」 山口連続殺人放火事件から10年|高橋ユキ – webゲンロン|考えるを育てる)
事件の背景には住人による加害者への村八分があったと言われていますが、加害者が妄想性障害と診断されており、真偽のほどは定かではありません。
しかし、事件後の取材では都会からUターンしてきた加害者と住民の間に軋轢があったとの証言が集まっているため、村八分があった可能性は否定できません。
住人12人という限界集落では村八分の効力も絶大ですが、結果としてこのような悲劇が生まれてしまいました。
2018年8月に、奈良県天理市の自治会にて起きた村八分状態が全国的なニュースとして報じられました。
奈良県天理市の自治会で起きた「村八分」騒動が波紋を呼んでいる。
自治会費を長年納入していた住民男性に対し、回覧板や広報誌を配布しないなどの人権侵害があったとして、県弁護士会が8月、自治会に是正を勧告した。
しかし、その後も改善されないとして、男性は自治会を相手取り慰謝料を求めて提訴。一方、自治会側は「差別はしていない」と反論し、真っ向から争う事態となっている。
自治会を納入しても、特定の神社の氏子でなければ自治会員として扱われないことが背景として存在しているようです。
2013年から大分県宇佐市で暮らす男性を地域住民が結託して村八分状態にしていた事件について裁判が開かれ、2021年に被害者側が勝訴しました。
自治区から排除されて「村八分」のような扱いを受けて人権を侵害されたとして、大分県宇佐市の男性(72)が元区長ら3人と市を相手取り、慰謝料など330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、大分地裁中津支部であった。志賀勝裁判長は「社会通念上許される範囲を超えた『村八分』だった」として、3人に計143万円の支払いを命じた。市への請求は棄却した。
判決によると、自治区は2013年、Uターン移住した男性が住民票を移していないことを理由に構成員と認めず、広報誌の配布や行事の連絡をしないことなどを決議。3人は男性の自治区への加入を拒否するなどし、地域で孤立を強いられる「村八分」の状態が続いたとした。
村八分の始まりは、ある日かけられた言葉でした。
2013年5月10日朝、大分県宇佐市内の農村に住む元公務員の男性(72)は野菜の出荷作業中に、地域の長老的存在の住民に車の中に呼び入れられ、こう告げられた。「付き合いせんことに決めたから。市報も配らんし、行事の連絡もせんので、参加せんとってくれ」
きっかけは住民票がないことを理由に、所有農地につき補助金がもらえる「中山間制度」の説明会に参加できなかったことでした。
そこから地域住民に話しかけても「話をすると怒られちゃうから」と避けられたり、無視される状況に発展。
忘れ物の帽子や庭のイノシシ除けネットの破損、柿の木を枯らされるという被害も起きていました。
このような地域を挙げた嫌がらせ被害は、今なお起きる可能性が潜んでいます。
村八分の対象になるのはどのような人なのでしょうか。
被害に遭うリスクを減らすためには、村八分を受ける可能性を少しでも減らすことが重要です。
村八分を受けやすい人の特徴を紹介します。
田舎の集落は培ってきた伝統を重んじる意識が強いため、伝統を壊すような行動を嫌う傾向があります。
そのため、その地域にない新しい風習を持ち込むような、外部から引っ越してきた人は嫌われやすいです。
また、土地のルールもわからずに行動して気付かない内にタブーを犯して、村八分につながるということもあります。
引っ越してきたときに色々聞いて回れば解決できそうですが、聞いて回ることすら疎ましく思われる可能性すらあるでしょう。
地域の集会には、行事に関する決まり事の共有だけでなく、草むしりなどの清掃活動も含まれます。
これらの集会への集まりが悪いと、地域住民としての責務を果たしていないとみなされ、村八分を受ける可能性があるでしょう。
地域住民とわだかまりなく暮らしたいと考えるなら、集会にはできる限り都合をつけて参加するようにすべきです。
知っているかどうかにかかわらず、その地域で定められているルールを破った場合は村八分の対象になり得ます。
このルールの内容は地域によってさまざまですし、明文化されていない場合も多いです。
知らない内にルールに違反してしまうこともあるため、特に引っ越したばかりの人は注意して行動するのがおすすめです。
もし村八分にされてしまった場合、どのような対処を取ればいいのでしょうか。
村八分も内容は立派な犯罪行為であるため、相手を特定して訴えることも十分可能です。
村八分を受けた時の対策方法を紹介します。
村八分によって地域住民から嫌がらせを受けても、大事なのは過剰に反応しないことです。
村八分による嫌がらせは地域の規範を守るためだけでなく、相手の反応を見て楽しむ目的がある場合も。
そうなると嫌がらせに反応することは相手の思うツボなので、無視するようにしましょう。
嫌がらせが効いていないことがわかれば、被害が減少する可能性もあります。
一番良いのは、別の土地に移り住むことです。
わざわざ嫌がらせを受けてまで、こだわって住み続ける理由はそこまで多くないはず。
ルーツのない田舎に移住して村八分を受けた場合は、できることなら引っ越して違う土地に住んだ方がいいでしょう。
しかし、先祖代々の土地を継いだり老齢の家族をケアするために移住した場合は、引っ越しはなかなか難しい部分があるかと思います。
村八分によって行なわれる嫌がらせ行為は、立派な犯罪行為に該当します。
当事務所などの探偵社に依頼すれば、村八分による嫌がらせの証拠を掴むための張り込みを行ない、全容を明らかにします。
また、集めた証拠によって法的措置に打って出ることも可能です。
調査は日本全国が対象で、全国各地に配置されている調査員が向かわせていただきます。
ご相談は24時間365日受け付けていますので、お困りのことがあればいつでもご相談ください。
まず、現状について相談することから始めましょう。
現在お持ちのお悩み事、被害の状況、対策依頼に関する質問や要望などのご相談が可能です。
※docomo・au・softbankなどの携帯電話アドレスはドメイン指定設定により毎月10件以上の「送信エラー」が起こっているため、フリーメール(GmailやYahoo!mail)の利用をおすすめします。しばらく経っても返信が来ない方はお電話にてご確認くださいませ。
監修者・執筆者 / 山内 / 2024年11月7日更新
1977年生まれ。趣味は筋トレで現在でも現場に出るほど負けん気が強いタイプ。得意なジャンルは、嫌がらせやストーカーの撃退や対人トラブル。監修者・執筆者一覧へ
Ranking
Copyright(C) ストーカー・嫌がらせ対策専門窓口. All Rights Reserved.
(C) ストーカー・嫌がらせ対策専門窓口