Harassment case
現在、すっかり「ブラック企業」という言葉が定着しています。
ネット掲示板で「違法な長時間・過重労働・違法労働・パワーハラスメントによって使い潰すことで成長する企業」を指す言葉として認識されていますが、元来は「暴力団の企業舎弟(フロント企業)などの反社会的な企業」を意味する言葉でした。
こうした、違法な低賃金や、劣悪な環境で厳しい労働を強いるブラック企業の存在によって、企業間の健全な競争が損なわれ、結果として日本企業の国際競争力や生産性の低下をもたらしています。
当然ながら、こうしたブラック企業の経営者や経営幹部には、「コンプライアンス(法令遵守)」という意識は皆無である場合がほとんどです。
労働基準法違反やさまざまなかたちでの偽装工作、粉飾決済や不正会計、近年では、国や自治体が提供する助成金や補助金の不正受給なども問題になっています。
こうした不正企業の姿勢を追及し、改めさせる、あるいは市場からの退場を求めるには、独りで闘うには不安もあります。
さっさとと転職するという手もありますが、社員を一人失ったくらいでは、こうしたブラック企業にとっては痛くも痒くもありませんし、不正を改めようなどと考えを改めることなど期待できません。
仮に、自らの勤務先企業が不正行為をはたらいており、こうした誤った経営姿勢を改めたいと考えた時、どう行動を起こすべきなのか、解説します。
勤務先で違法行為が行われていることを、知ってしまった場合、こうした行為をやめさせたい場合、内部通報者を守る法律として「公益通報者保護法」が制定されています。
例えば、企業内で倫理違反やコンプライアンス違反の発生を知った人が、その事実を会社内部または会社の指定した窓口に通報する「内部通報」や、会社の指定した窓口ではなく、行政機関やマスコミなど外部に通報する「内部告発」などといった手法がありますが、通報あるいは告発したら、報復として、不当な人事異動などの不利益な扱いを受けてしまう心配があります。
そうした行為から従業員の身分を守るのが「公益通報者保護法」です。
2004年に定められた法律で、内部通報者(公益通報者)に対する不利益な扱い(解雇、契約打ち切り、降格、減給、退職金の減額・没収、給与上の差別、訓告、自宅待機命令、退職の強要、雑務に従事させることなど)を無効、禁止とすることについて定められています。
しかしながら、内部通報制度は会社に設置を義務付ける法律は未だに存在せず、会社の不正行為に対し、一従業員が告発する体制が整っているとは言い難いのが現実です。
勤務先企業の違法行為を告発したことによる解雇は、当然ながら、「不当解雇」にあたります。よって、会社側は、それらしい言い訳をつけて解雇しようと試みます。
会社が従業員を解雇する際、「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」といった方法のみであり、客観的・社会的相当性がなければ、解雇権の濫用と判断されます。
また、会社の秩序を著しく乱したペナルティーとして懲戒解雇された場合でも、客観的合理性と社会的相当性が必要となり、解雇される側が、会社の名誉を著しく傷つけるような犯罪行為や経歴詐称、度重なる無断欠勤などを繰り返すなどの理由でなければ適用されません。
また、懲戒解雇を行うには、あらかじめ懲戒解雇の対象となる事由を就業規則に明記しておく必要があります。当然ながら、企業の不正行為を告発したことによる解雇は、不当解雇と断言することができます。
勤務先企業の違法行為を告発するにあたって、最も注意すべき点として、SNSなど、ネット上への投稿が挙げられます。
例え、その違法行為が事実であったとしても、業務や経営に関連する内容であり書き込みである場合、懲戒処分の対象となる可能性があります。
特に、経営者や経営幹部、同僚の従業員、取引先などの個人情報や名誉を棄損する内容を書き込むのは禁物です。また、次に、社外秘のノウハウなど、会社の機密情報を漏洩した場合も、懲戒処分の対象となり得ます。
勤務先企業は違法行為をしているとは分かっていたとしても、その証拠もなく、安易な投稿をすると、勤務先企業に大きな損害をもたらすだけではなく、会社側との信頼関係も壊れ、自身も懲戒処分を受ける可能性がありことを知っておくべきでしょう。
「SNSでは本名や勤務先を明らかにしていないから大丈夫」と思っていても、プロフィールや写真、過去の投稿から、思わぬ形で特定されてしまうこともあります。
企業内部に、違法行為やコンプライアンス行為が存在する際、この事実を明らかにして、防止・是正することによって、法令遵守を促進し、加えて、その法令を守ろうとした人の安全の保護を確実にすることにつながります。
このような観点から、内部通報者を保護する制度が、公益通報者保護法です。同法は、企業が内部通報者を解雇するなどといった不利益な取り扱いをすることを禁止するとともに、内部通報があった場合に、企業側が取るべき措置を定めています。
公益通報者保護法によって保護される「公益通報」は、「労働者」によるものでなくてはなりません。
ここでいう「労働者」とは、雇用主からの指揮命令を受けて業務に従事し、その対価として賃金の支払いを受けている者であり、この雇用形態が正社員やアルバイ・パート、派遣社員であっても、「労働者」と定義されます。
一方で、退職している場合、雇用関係にないため、在職していた会社の違法行為を通報しても、公益通報者保護の「対象外」となります。
しかしながら、在職中に違法行為を通報し、後に退職した場合は、労働者の身分を有する時点での通報という扱いとなり、公益通報の対象に含まれます。
よって、退職後に、通報を理由として、退職金を減額するような不利益取り扱いは禁止されます。
通報対象事実は、まず違法行為を対象とします。違法行為といっても、すべての犯罪ではなく、公益通報者保護法が掲げる「通報対象」に違反する行為に限定されます。
これは、刑法、食品衛生法、金融商品取引法、農林物資の規格化等に関する法律、大気染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、個人情報の保護に関する法律の7種類を定めると共に、それ以外にも政令で定める法律を対象としています。
この中でも、最も効果的な通報先は、処分や勧告の権限がある行政機関に対する通報です。処分とは命令や取り消しなど、公権力の行使、つまり強制力ある措置です。勧告とは処分以外の助言や指導などの措置です。
どの行政機関に権限があるかは、各種法令の規定によりますが、権限ある行政機関に対する通報でないと保護対象とはなりません。
しかし、通報しようとする人が誤って権限のない行政機関に通報をしたときは、通報を受けた行政機関側は、どこの行政機関が権限を有するのかを、教えてあげなくてはならないとされています。
そして、公益通報をされた行政機関は、必要な調査を行い、通報対象事実があると認めるときは、法令に基づく措置を取らなければなりません。
最近では、社員や元社員による書き込みとみられる、会社の評判を掲載されるサイトも多く存在します。その根底には、政府や行政機関に対する不信感があり、ブラック企業を潰すことは期待できないといった思いもあるのでしょう。
わずかな時間外労働やサービス残業などを、労基署が片っ端から取り締まっていたら、日本企業は他とゆかなくなることは明白でしょう。
しかしながら、労基法違反についても、過労死や自殺者を出すほどの環境で働かせたとしても、せいぜい罰金処分程度であり、裏を返せば罰金分を稼げば違法し放題と考え、罰則が抑止力ではなく免罪符となってしまう側面もあります。
モラルのない経営者は、受ける罰則以上の金額を稼いでしまえばいいという考えになることも考えられます。
そうはいっても、会社の評判を掲載するサイトや、掲示板、SNSなどで、特定の会社の違法行為を公表したとしても、「偽計業務妨害罪」で訴えられるリスクがあります。
ネット上での書き込み以外で業務を妨げる行為を行えば「威力業務妨害罪」に問われる可能性もあります。
特に、告発しようとする相手が競合会社であり場合には、“競合潰し”という明確な動機が存在すると推認され、場合によっては逮捕される可能性すらあり、避けるべき行動です。
告発する違法行為の内容が真実であれば、証拠を確保するなど、入念に下準備をした上で、公益通報をする方が賢明です。
告発後に会社から報復されたとしても、この公益通報者保護法が適用され、是正勧告されます。
それでも従わない場合は会社名が公表されます。告発者(公益通報者)に対しては、解雇の無効や不利益取り扱い禁止といった保護対象とされます。
中小企業の場合、会社に内部通報に関する体制が整っていない場合も多く存在します。
とはいえ、行政機関や外部機関へ通報するには、公益通報の保護要件を満たしているか検討しなければなりませんので、慎重に行う必要があります。
リスクを負わないためにも、会社に内部通報の規程がなく、違法行為の情報の取り扱いに困った場合、探偵社に調査を依頼し証拠を確保した上で、行政機関や弁護士などに相談することをお勧めします。
組織的な不正や経営者による不正の場合、社内窓口への通報をしてしまうと社内で揉み消されかねません。
通報先を会社にすれば法律上の保護は受けられますが、その結果、変化が期待できるのかを考えることも非常に重要です。
さらにいえば、報復人事などで対応されかねませんし、同僚からは「お前は会社を売るつもりなのか」と言われ、人間関係に悪影響を及ぼすばかりか、そもそも同僚が不正の共犯者ということも考えられます。
よって、組織全体にわたる不正の場合には、会社全体を敵に回すことにもなりかねません。
社内の所定の通報先が信頼できない場合、通報先を慎重に検討しましょう。ただ、行政機関、報道機関など外部への通報を検討する場合、保護要件を満たしているか確認する必要があります。
勤務先企業の違法行為を、自らの身分を守った上で告発するには、勇気がいることですが、以下のような窓口が存在します。
その他の政府機関や各都道府県の弁護士会、自治体など訴えるのもひとつの手です。
同じ会社からの被害の報告が数多く寄せられていれば、そうした機関が働きかけをしてくれる可能性もあるでしょうし、被害者同士で連携しての集団訴訟提起などの手段も考えられます。
それでも解決が難しく、訴訟問題に発展しそうなほどのトラブルに巻き込まれたときは、企業・団体調査の専門家である嫌がらせ対策専門窓口にご相談下さい。
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